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GRAPHGATE優秀賞オカダキサラさんへ直撃インタビュー
テーマは「街が見逃した奇跡の現場」
キヤノンギャラリー銀座で、GRAPHGATE企画展オカダキサラ写真展『きっと今も光って』が9月10日~14日にかけて開催されました。オカダキサラさんは「街が見逃した奇跡の現場」をテーマにちょっとクスッと笑えるスナップが魅力の作家さんです。彼女が撮影したデータは100万枚を超えているそうです。そんな素晴らしい作家さんに話を聞きたいと思い、ユニークなスナップが好きな編集部のサトーがインタビュー取材に伺いました。
【プロフィール】
オカダキサラ Web Instagram X
東京生まれ、武蔵野美術大学卒業。「街が見逃した奇跡の現場」をテーマにストリートスナップを撮り続けている。2011年、第4回1_WALLファイナリスト。2015年、Juna21に入選。2016年、コニカフォトプレミオ入選。2023年、キヤノンマーケティングジャパン主催第1回「GRAPHGATE」優秀賞受賞。2024年より、えるマネージメントに所属。2024年1月に初の作品集「新世界より」刊行。
それではオカダキサラさんのインタビューをご覧ください!
今回の展示のテーマを教えてください
GRAPHGATEの応募要項で、過去の発表作品も問わず応募可能とあったので、過去の作品をすべて見直しました。今回展示されている作品は、過去のセレクトから漏れてしまったものですが、改めて見返してみると、どの写真も面白く、自分の色が出ていることに気づきました。撮った当時は気づかなかったけれど、「こんなに写真が光っているじゃん」と思いました。たぶん、今この瞬間に撮った写真も、未来に見直したら気づかなかった光が見えるのではないかと思い、展示のタイトルを『きっと今も光って』にして、光をイメージするものを集めて展示しました。
今回の展示の見どころはどこですか?
いつもキヤノンギャラリーに来ると、広い空間なのに壁沿いにしか人が歩いていないと感じていました。そこで、一緒に街を歩いているような気持ちになれるような展示をしたいと思い、背景スタンドを使って壁以外のスペースも活用し、動線を壊す工夫しました。
この写真は何年分ぐらいの写真になるのですか?
普段、どのぐらいの量の撮影をされるのでしょうか?
古いものは2010年、最新のものは2023年の結婚式の写真なので、13年分の写真になります。撮影できる日は1日に約400枚、撮れない日でも100枚ほど撮っています。平均すると1日約200枚、1年で約7万3000枚になります。そのため、カメラのオーバーホールがすぐに必要になるんですよね。
会場はキヤノンギャラリー銀座。没入感が高いブラックキューブを採用した作家なら一度は展示したいギャラリー。 | 扉を開けて真正面には背景紙スタンドを使って作品を展示。いつものキヤノンギャラリーとは違った雰囲気!! | ギャラリー内は大型のプリントがたくさん。様々な要素が入っているオカダキサラさんの作品の隅々まで楽しめます。 | ||
その中で面白い瞬間はどのぐらいあるのでしょうか?
感触的には1割という感じ。ムラはありますけどね。撮れる日は1日で10枚とかあります。
こんなに面白い瞬間って、そんなにありますか?
結局、こういう瞬間は人の常識や文化、考え方のズレが見出される瞬間だと思うのです。そして、その瞬間を“ズレている私”が撮っているという感じでズレがうまく合わさってできた作品だと思います。写真を撮影していると、この世にはズレている人ばかりで自分が多少ズレていても構わないんだなと感じます。みんな違って、みんな良い、そんな感じ。こういう写真を見ると“ズレている私”がいても許されている気がします。
オカダキサラさんが持っているのは今回の展示用に作られた限定5冊で制作された特装版図録(6万6000円)。なんとオリジナルプリント付き。 |
写真を始めたきっかけを教えてください
学校の授業でスナップ写真を撮影する課題がありました。写真を提出したところ、講評の教授から「君はストリートスナップを続けた方がいい」と言われたのがきっかけです。その時から、鬼のように撮影し、鬼のようにプリントして、L版で約200枚プリントしては教授に見せ、良い悪いに分けてもらいました。何回も200枚プリントして教授に見てもらい、何が良いのか研究しました。それを繰り返すうちに、「私は100万枚の良い写真を残してやるんだ」と思うようになりました。100万枚は教授が亡くなる前に達成したいです。
楽しいスナップを撮るコツは?
最近思ったのは、自分が楽しくないと写真が撮れないということ。心の余裕はスナップに反映されます。苦しんでいたり悩んでいたりすると視界が狭くなり、被写体を見つける反応が遅れます。そのため、常に楽しくポジティブでなくても、ある程度の機嫌を保つことが大切だと感じています。写真展などで写真を褒められた後は特に撮影がはかどります。それで3日は持ちます。
会場では過去に作られたZINEや昨年12月にケンエレブックスから発売された写真集なども販売されていました。 |
ZINEをたくさん作られている印象があるのですが、ZINEづくりを始めたきっかけは?
アートブックフェアに誘われたのがきっかけで、最初は本の作り方なんて知らなかったのでA3ノビでプリントして半分に折り、ホッチキスで止めて作るという単純なものを作っていました。その時に本にまとめる作業が面白いと感じました。1枚1枚でしか見ていなかった写真がZINEにすると物語として繋がることに気づいたのです。物語にしなくても、1冊にまとめるにはテーマが必要だし、本にするには印刷も必要なので、今までの写真セレクトよりもシビアになる感覚がとても良いと感じ、最初は修行だと思って作っていました。
一冊ごとにテーマを変えてまとめている感じですか?
撮影の根底にあるテーマは「街が見逃した奇跡の現場」です。最新のZINEでは、写真のどこかに婚前写真が写っているシリーズを作りました。その他にはお別れのバイバイの手を振っているシーンも撮り集めています。
8月に行われたブックフェア用に作られたどこかに婚前写真が写っているZINE「NOLADRAMA」。 | オリンピックを目前に控えた東京をテーマにしたZINE「やさしくやさしく閉じてください」。 | 昨年12月にケンエレブックスから発売された写真集「新世界より」。こちらは書店で販売中のアイテム。 | ||
撮影のプロジェクトはいくつか同時に進行しているのですか?
私の場合、常に撮り続けているので、発表しないと写真が溜まり続けていきます。どこかでまとめないと、自分が撮ったものを忘れてしまうので、作品集にまとめることで自分の中の区切りをつけています。だからアートブックフェアに出ることは重要だと思っています。ただアートブックフェアに出るにはお金も時間もかかるので、ZINEは1年に1回作れたら良いなと考えていました。実は年に3冊ぐらいZINEを作っているんですよね。
プライバシーの問題とかあって、スナップが難しい時代だと思うのですが、
撮影時に気をつけていることってありますか?
まず撮影していることがわかるようにしています。そして撮影後に嫌な反応をされた時は絶対に発表しません。基本的に自分が撮られたとしても良いと思うものを撮影し、発表する際にはさらに客観的に考えます。第1段階のセレクトでは、自分が嫌だと思うものは除外。さらに主役でなくても、横に変な顔をしている人がいたらセレクトから外します。酔っ払いなど、許される範囲のダメな姿は載せることもありますが、ちゃんと確認したものを使っています。
ジワジワと面白さが伝わってくるのがオカダキサラさんの作品の特長。 |
どのぐらいの頻度で撮影しているのでしょうか?
常に撮影しています。デジタル一眼レフ時代は40ミリと50ミリのレンズを使っていました。パンケーキレンズが好きだったのですが、使っていたレンズが生産中止になってしまったのと、ミラーレスカメラに移行したので、以前のレンズ(EFレンズ)を使うにはマウントアダプターが必要になり、今は小型軽量なRFマウントの28ミリを使っています。28ミリだと広角なのでクロップを使うようになったら、これが気持ち良い感じになっています。
本当はRFレンズで40ミリのパンケーキレンズが欲しいので、キヤノンの開発の方に会うたびに「パンケーキレンズはいつ出るんですか? できればハーフマクロにして欲しい」と言っています。
普段、撮影に使っているカメラはミラーレスカメラのキヤノンEOS R6M2。 | レンズは軽量で高画質を両立したRF28mm F2.8 STMを愛用。 | |